真夜中のティータイム
気になった事を気ままに書いていくブログです。 映画、アニメ、小説(SF、ミステリー、ファンタジー)、 ゲーム(主にRPG、格ゲー)の話題が中心になると思われます。
「作者不詳(下) ミステリ作家の読む本(三津田信三/講談社文庫)」、読了。
上巻の続き。
「朱雀の化物」
S地方の山荘「岸壁荘」で起こった高校生惨殺事件の話。これまでのエピソードとはうって変わって、「13日の金曜日」のようなスプラッターホラー。ただこう言うスラッシャーと言うか、殺人鬼ホラーってあまり好きじゃないし、イジメを題材にしているので、不愉快な描写がかなり多く(読んでいて、非常に苦痛だった)、とても好みの作品とは言えない。もっともイジメっ子が惨殺されるシーンはある意味痛快だが(こう言う人間は殺されて当然)。ただ、そこで終わってないのが、このエピソードの良いところ。なんと最後を「そして誰もいなくなった」風に閉めたのだ。このため、ラストで一気にミステリー色が強くなり、実に楽しい作品になっている。さて、その後の解決編だが、前回で怪奇現象が起きなかったため、今回はその分たっぷりある。基本は殺人鬼ホラーで大したことがないのだが、これに闇の恐怖(闇の描写が上手い)と、「坂の怪談」の要素をプラスしているため、実に恐い。真相は、確かに犯人も意外だが、「記録ノート」と言う物自体をトリックに使っており、なかなかのものだと思う。しかも、真相が分かっても、不気味な余韻を残す辺りも見事。
「時計塔の謎」
網膜色素変性症の少女が、時計塔から転落死した話。他殺でも、自殺でも、そして事故死でもない状況下で、一体彼女に何が起こったのか?…っと言った内容。その可能性をすべて打ち消していく展開が面白く、同時に転落死した原因や犯人が相当に意外。そしてラスト近くで描かれる人間の心の闇が、実に恐い。ちなみに、事件自体は単純なため、すぐに真相が分かり、怪奇現象も起きない。
「首の館」
サイトで知り合い、互いの顔も知らない〈迷宮社〉のメンバーが、「迷宮草子」製作の会合で狗鼻島に集まる。そこで起きる連続殺人。「朱雀の化物」以上に「そして誰もいなくなった」要素の強い作品。しかも元ネタ同様のサスペンスでなかなか読ませるエピソードに仕上がっている。だが一番感心したのは犯人の正体で、意外な犯人でありながら、注意深く読めばちゃんと分かる仕掛けになっているところ。いや~、はっきり言ってこれには気が付かなかったよ。後、本エピソードで「この同人誌を読むと、何故、怪奇現象が起こるのか?」っと言うことが判明する。いや、いや、これなら、怪奇現象の一つや二つ起こっても不思議なじゃない。
「迷宮草子」
すべての謎を解き終えても、怪奇現象は終わらなかった。…っと言う、後日談的なエピソード。ここで、これまでの推理の不備を述べる訳だが、これは私も不審に思っていた事でなかなか面白かった。ただ、本エピソードはミステリーでなく、ホラーとして閉める終章にすぎない。途中でいきなり以外すぎる影の存在が浮かび上がってくるが(さすがにそれはありえねぇ…っと思った)、これもホラーの要素の一つにすぎない。つまり、あくまでも本書をホラーにしたかったのだろう。そう言う意味でも、この終章は賛否両論があると思う(ミステリーとしての要素を次々を打ち消している訳だし)。でも本書は、ミステリーとホラーが必然的に混合された、まれに見る傑作と言って良いと思う。それもとびっきり面白い。
さて、すべてを読み終えて、私が一番のお気に入りだったのは「霧の館」、ミステリーとしての完成度が高かったのは「朱雀の化物」と「首の館」、 ホラーとして怖かったのは「子喰鬼縁起」と「朱雀の化物」、…っ言ったところだろうか。
今日のアニメ
・変ゼミ #1「不偏論者たちから見た世界の事象に関する考察」…単なる変態アニメ。別に観なくても良いけど、花澤香菜の声が可愛かったので、しばらく様子見。…っと言っても、来週あたりで切りそうな予感。
・そふてにっ #1「あされんっ」…全然面白くないや。視聴中止。
・30歳の保健体育 #1「はじめての■■■」…これ、酷過ぎる。観るに堪えない。当然、視聴中止だ。それにしても、今期はエロアニメと下ネタアニメしかないのか?。日本のアニメ界も終わったな。
・魔法少女まどか★マギカ #2「それはとっても嬉しいなって」(再見)…やっぱ、マミさん、イイ!
今日の映画
・イリュージョニスト(イギリス/フランス/2010年)
実に静かなタッチのアニメーションだ。派手なシーンは一切なく、地味ではあるが、非常に心に残る作品になっている。また台詞がほとんどなく(だから字幕もほとんどない)、登場人物の動作や表情、そして周りの風景だけで、ストーリーや登場人物の心情を見せていくのだから凄い。この辺りの映像センスは、是非、日本のアニメ作家も見習って欲しいものだ(今の日本のアニメは台詞が多すぎて、うるさいだけ)。映像センスと言えば、雨の描写が実に上手い。あと、無垢な少女として登場したアリスが、段々と大人の女性になっていく描写も見事。もっとも別の意味では(少女は少女のままであって欲しい)、「残念」っと言う気はするけど(爆)。何れにせよ、アカデミー賞の長編アニメーション部門ノミネートはダテじゃない。これは名作だ。