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真夜中のティータイム

気になった事を気ままに書いていくブログです。 映画、アニメ、小説(SF、ミステリー、ファンタジー)、 ゲーム(主にRPG、格ゲー)の話題が中心になると思われます。

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「異形コレクション 京都宵(光文社)」、読了。
「日本で一番好きな町は?」って聞かれたら、私は躊躇せず京都と答える。たぶん世界の中でも5本指に入るくらい好きだと思う。そんな京都を舞台にした幻想と怪奇のオムニバス。以下、個別にコメントを。

「おくどさん(菅浩江)」→60歳近い中年女性が語る身の上話。…全編が京都弁で、良い雰囲気だ。ただ不思議な話ではあるが、怖い話でないのが難か。★★★☆☆
「テ・鉄輪(かなわ)」入江敦彦→丑の刻参りの発祥の地である鉄輪の井戸を訪れた私。そこで偶然、「テ・鉄輪」と言う喫茶店に入ることになった。客は私一人の筈なのに、障子の向こうから笑い声が聞こえてくる。…怖い話と言うよりは、人間の因縁と狂気を描いた作品。全体的にあまり怖い話ではないが、一部怖いシーンもある。★★★☆☆
「くくり姫(加門七海)」→叔母夫婦が京都にある家を留守にするため、私は夏の間、その家に留守番することになった。ある日、家の近くになる神社で猫を見かける。猫は首輪をしており、その首輪には見事な水引細工があった。その細工に心を奪われた私は、飼い主のことが気になるが。…ホラーと言うよりは、幻想談。この世界では明らかに時間の進み方が遅い、いや止まっている。まさに白日夢のような作品で、文章も美しい。怖い作品ではないが、かなり私好み作品だ。★★★★★
「後ろ小路の町家(三津田信三」)→当時中学生だった私は、両親の都合で京都に引っ越してきた。引っ越した先は、「後ろ小路」と呼ばれる薄気味悪い噂のある場所だった。ある日、体調の悪さを感じた私は早退するが、家への帰り道に…。怖い、怖すぎる。実話心霊話に通じるところがあり、収録されている話の中で一番怖い。絶対に夜、読まないほうが良い。★★★★★
「釘拾い(藤田雅矢)」→成人になった昌章は、子供の頃苦手だった釘抜き地蔵にやってきた。そこで子供の頃の遭遇した事件のことを思い出す。…生きている釘と言うアイデアは面白いがそれだけ。何よりも怖くないのが最大の欠点だ。★★☆☆☆
「夜の鳥(化野燐)」→京都の妖怪話を取材していた俺だったが、途中から取材が上手くいかなくなった。そう、鵺塚を訪れた辺りから。…冒頭の雰囲気から妖怪話かと思ったら、一種の不条理小説だった。アイデアは悪くないんだが、あまり私好みではない。★★☆☆☆
「朱雀の池(小林泰三)」→戦時下の京都の文化財問題は有名な話だが、これはそのSF版。大して面白い話でないので、ガッカリしていたら、ダークなラストシーンで評価急上昇。なるほど、こう言うやり方もあるのかと、納得した。★★★★☆
「衿替(森山東)」→会社で嫌なことがあった私は、馴染みのお茶屋に行くことにした。だがそのお茶屋の芸妓の二人が辞め、一人が引きこもりになってと言う。…「本当に怖いのは人間」、「女は怖い」って言う話。ところが最後の最後で、怪異談へと変貌。意外な展開がなかなか楽しい。★★★☆☆
「はだかむし(遠藤徹)」→高額の報酬と単位のため、田代は教授と京都の「虫送り」の祭りに同行する。…エロスと異形の物語だが、「何?これ」。オチなしの上に、怖さもなしで、まったく面白くない。★☆☆☆☆
「京都K船の裏の裏 丑覗きの会とはなにか(ひさうちみちお)」→丑の刻参りを覗く会の話。小説と言うよりはエッセイのような感じ。どこまで嘘でどこまでが本当か知らないが。しかし、これ、ホラーか?★★☆☆☆
「父の恋人(竹河聖)」→父が死んだとき、父に愛人がいたことを知った。それからしばらくして、今度は母が倒れた。そのとき、父の愛人だった者の住所を知り、私は彼女の住む家に向かったが。…なんじゃ、単なる「人間が一番怖い」タイプの話か…っとガッカリしていたら、ラスト数行で立派なホラーになる。なるほど、そう言う訳かぁ…って感心した。★★★★☆
「夜想曲(菊地秀行)」→今でも私は杏里の幻覚を見る。そう、1年前に杏里を刺したのは私だ。だが私は今も昔も車椅子で施設から出られない。…?。よく分からん。しかも怖くないし。★☆☆☆☆
「陰陽師 鏡童子(夢枕獏)」→童子が闇の中を歩く。やがて目の前に、髪長く、色白く、血のような唇を持った女性が現れるが。…「不思議の国のアリス」の古代日本版のような作品。ただそれだけのもの。★★☆☆☆
「「西の京」戀幻戯(朝松健)」→西の京・山口で、京都に魅せられた者たち。朝松健の博識ぶりは相変わらず凄いが、話が面白くない。★☆☆☆☆
「常夜往く(五代ゆう)」→家の老木が虫食いにあい、倒れる危険性が起こった。仕方なく、老木を切ることにしたが。…一種の幻想談。悪くはないが、何か物足りない。★★☆☆☆
「夢ちがえの姫君(速瀬れい)」→昔、悪夢を吉夢に変える「夢ちがえの姫君」と言う者がいた。ある夜、姫の部屋で奇妙な声が聞こえる。侍女が姫の部屋を覗き見ると。…「本当に怖いのは人間」的な話はあまり好きじゃない。この話はまさにそれだが、意外と面白かった。不思議な部分もあるが、やはり読後は人間の怖さが印象に残る(女の怖さか?)。前半の伏線がどんどん生きてくるラストもなかなかのもの。★★★☆☆
「宵の外套(井上雅彦)」→京都に伝わる都市伝説、黒く長い外套の怪人の話。…なんか都市伝説のウンチクのような話で、あまり面白くない。後半も読んでいて、ほぼ?状態。★★☆☆☆
「魔道の夜(森真砂子)」→桃山にある更生施設。この施設に住む女性がある日、行方不明になった。そして翌朝発見された。野犬に食い殺されて。…ホラー小説はこうあるべき…って感じの正統派。中盤のサスペンスや恐怖も申し分ない。だが肝心の真相がイマイチ。それまでが良かっただけに、非常に残念だ。★★★☆☆
「水翁よ(赤江瀑)」→最近、大先生の様子がおかしい。…失われていく妖怪の悲しさか。イマイチ。★★☆☆☆
[総評]→お奨めは文句なく「くくり姫」と「後ろ小路の町家」。あと「朱雀の池」や「父の恋人」や「夢ちがえの姫君」も「魔道の夜」も悪くない。

その他の記事は別枠で。

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