真夜中のティータイム
気になった事を気ままに書いていくブログです。 映画、アニメ、小説(SF、ミステリー、ファンタジー)、 ゲーム(主にRPG、格ゲー)の話題が中心になると思われます。
「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ(大崎梢/東京創元社)」、読了。
駅ビルの6階にある書店、成風堂。この店の店員・杏子とアルバイト・多絵がさまざまな謎に挑む短編集。
「パンダは囁く」→近くに住む老人から本を頼まれたと男がやってきた。その本のタイトルのメモを見て、書店・成風堂の店員・杏子は頭を抱えた。「あのじゅさにーら、いいよんさんわん、ああさぶろうに」。「何だ?、これは。まるで暗号だ」。…正確には暗号ではないが、暗号ものの一種と言って良いだろう。メモの意味するところはかなり意表をつくが、その後にくる裏の真実は更に意表をついている。意外な展開と意外な事実。これは傑作だ。
「標野にて 君が袖振る」→一人の中年女性が成風堂にやってきた。女性の話によると、彼女の母親が失踪してしまったようだ。その失踪に母親が購入した本が関わっているらしい。調べると、購入した本はコミック「あさきゆめみし」だった。…前回とは逆パターン(何が逆なのかは、読んでからのお楽しみ)。次々と理論と知識で事実や謎を解いていく過程はかなり興味深い。しかも思ってもない展開にはかなり驚く。逆パターンなので、前作よりは評価が下がるが、傑作であるのは間違いない。
「配達あかずきん」→成風堂が美容院に配達したばかりの雑誌に、盗撮写真が挟まれていた。それを見た美容院の客が憤慨。美容院は存続の危機に陥る。…相変わらず伏線張りまくりのストーリーで楽しい。また、少ないヒントから真実を見つけ出していく多絵の推理も魅力的。事件の真相自体はミステリーとしてはよくあるパターンだが、それでも読んでいて、真相が見抜けないのはさすがだ。ラストの清々しさも絶品。
「六冊目のメッセージ」→成風堂に一人に女性がやってきた。彼女が言うには、入院中に読んだ本が素晴らしかった。その本の選んでくれた店員さんにお礼が言いたいと言うのだ。だが成風堂の中に該当者がいない、一体誰が。…前3作とはうって変わって、「日常の謎」もの。本を選んだ人間の正体がかなり意外だったし、全体的にほのぼのとしているのも良い。だがあまり印象に残らないのが難か。
「ディスプレイ・リプレイ」→アルバイト店員によって、店内にコミックのディスプレイが作られた。ところが次の日、何者かによってディスプレイが黒スプレーで無残に汚されていた。一体、何者が。…設定に色々と無理がある。真相も意外ではあるが、こう言うことは普通起こらないだろう。色々と欠点があり、読んでいて、あまり面白くなかった。
この短編集は一般的に、北村薫的「日常の謎」ものだと言うことになっている。だがこれにはちょっと反論がある。この作品は、決して「日常の謎」だけではない。今回収録されている5編の作品を見るだけでも、「些細な謎(違和感)→事件」もあるし、その逆パターンもある。つまり、結構バラエティーに富んでいるのだ。ただ、後半になるに連れて、段々と作品の質が落ちているのが残念だなぁ。さて私のお奨めは、最初の「パンダは囁く」。この作品は大傑作だと思う。ところで、数多くの本ネタは本好きには嬉しいなぁ。
今日のアニメ
・グイン・サーガ #12「新たなる運命」
・To LOVEる-とらぶる- #11「金色の闇」&#12「戦慄!体育祭」
今日の映画
・巨人征服(アメリカ/1923年)
今観ても笑えると言うのは、凄いというか、さすがと言うか。中でも巨人の虫歯を抜くシーンは大笑いしてしまった。あと、巨人の暴れっぷりが、実に痛快。古いコメディではあるが、なかなか楽しめた。