真夜中のティータイム
気になった事を気ままに書いていくブログです。 映画、アニメ、小説(SF、ミステリー、ファンタジー)、 ゲーム(主にRPG、格ゲー)の話題が中心になると思われます。
しばらくじっとしていたアルトゥールだったが、やがて荷物の中からランタンを取り出し、火をつけた。
そしてすばやく手を伸ばし、ランタンを掲げる。
一瞬にして周りが明るくなる。
と、そのとき、ふたつの黒い影が飛んできた。
ひとつはランタンに当たり、その拍子に手からランタンが落ちて壊れてしまった。
もうひとつは、アルトゥールの顔のすぐ側をかすめる。
もうホンの少しでもズレていたら、ただではすまなかっただろう。
しばらくアルトゥールは様子を見ることにした。
やがて、何かがこちらに近づいてくる気配がした。
じり、じり、っと近づいてくる何か。
近くに置いていた剣に手をかけるアルトゥール。
そしてもう一方の手を焚き火に伸ばし、中から火のついた木を一本取る。
その間も何かが、じり、じり、じりと近づいてくる。
アルトゥールの額には、汗が…。
たぶん、もういくらも距離が開いてないだろう。
意を決め、アルトゥールは焚き火の木を投げる。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
すぐ目の前で焚き火の木がそれに当たり、それはまるで人間のような声を上げた。
そして一瞬ではあったが、それの姿を見ることが出来た。
なんと形容したら、いいのだろう。
闇にうごめく闇を言ったら良いのだろうか。
闇より更に黒い球体のようなものから、無数の触手のようなものが延びていた。
そしてその触手がクネクネと動き回っている。
さすがに百戦錬磨のアルトゥールでさえ、息を呑んだ。
これがこの世の生き物なのか?
火が消え、周りは再び闇に包まれた。
「とにかく、相手の動きを気配で掴まないと」
静かに目を閉じ、精神を集中させる。
じり、じり、じり、じり、じり…。
やがて空気に乱れが生じた。
あの触手が向かってくる…。
察したアルトゥールは剣で、触手を払いのける。
そして次の動作で、その生き物の胴体があると直感した部分に剣を刺す。
手ごたえはあった。
だが、手傷を負わせたとは思えなかった。
「剣ではダメか」
だがそのとき、アルトゥールはある考えが浮かんだ。
「第1話:嘆きの沼の黒い影 #3」へつづく