真夜中のティータイム
気になった事を気ままに書いていくブログです。 映画、アニメ、小説(SF、ミステリー、ファンタジー)、 ゲーム(主にRPG、格ゲー)の話題が中心になると思われます。
「血のごとく赤く―幻想童話集(タニス・リー/ハヤカワ文庫FT)」、読了。
おとぎ話を元にした短編ダークファンタジー(ひとつだけ、バレエがあるが)。以下、作品ごとにコメント。
「報われた笛吹き」→ネズミの神を祀る村に、笛吹きが現れる。…元ネタは「ハーメルンの笛吹き」。笛吹きは変に理屈っぽいので、原作ほど不気味さが感じられない。★★★☆☆
「血のごとく赤く」→二番目の妃が王のもとにやっていた時、一番目の妃の子であるビアンカと言う少女と出会う。…元ネタは「白雪姫」。しかし、白雪姫(ビアンカ)と継母の立場が原作とは全く違うのが面白い。白雪姫の悪女っぷりが最高。そして、くるぶしまで垂らした黒い髪、雪のように白い肌、血のように赤い唇、昼間は出歩かず、十字架を恐れ…って言う描写から大体の正体は分かると思うが、その通り。つまり、完全に私好みの作品なのだ。もっとも、ラストが常識過ぎてイマイチだが。もう少しダークなラストにして欲しかった。★★★★☆
「いばらの森」→王子の前に、全身黒ずくめの女が立ち塞がった。そして、女は王子に「この先に行かなければ、国を与える」っと言った。だが、王子は先に進む。やがて、すべての切れものを禁じている村に辿り着く。…元ネタは「眠れる森の美女」。同童話と同じクライマックスの再現なのに、ひたすら寒々しく、物悲しく、虚しく空虚。退廃感が非常に強い作品だ。また、茨に覆われた廃墟の描写が圧巻。ちなみに「切れもの」は糸車の針の事を指す。★★★★☆
「時計が時を告げたなら」→魔女が公爵の呪いをかけようとするが、その正体がばれてしまう。魔女は彼女の娘にその後を継がせ、息絶える。娘は灰をかぶることで美貌を隠し、その機会を狙う。…元ネタは「シンデレラ(灰かぶり)」。ここに登場するシンデレラは魔女で、その悪女っぷりが半端じゃない。継母とその娘たちを欺くところは、原作の逆転劇って言う感じで、実に楽しい。「ガラスの靴」や「0時を知らせる時計」も出てくるが、すべてが悲劇に結び付くところが面白い。全体的に救いのないダークな内容と結末で、かなり楽しめた。★★★★☆
「黄金の綱」→子を欲してない両親から、魔女は子を引き取り育てた。子はジャスパーと名付けられ、美しい娘に成長した。そしてジャスパーが13歳になったとき、魔女は彼女が闇の公子へ使える身である事を聞かされる。…元ネタは「ラプンシェル(髪長姫)」。まさにダークファンタジー。凄まじいまでに闇が美しく、魅力的で、読んでいるものをダークサイドに引きづり込むような作品。この短編集の中では珍しくハッピーエンドだが、実はこの終わり方も闇を称えるものだと言うのが凄い。かなり私好みの作品だ。★★★★☆
「姫君の未来」→小さな国に、ジャラスミと言う姫君がいた。ある日、町の市場で男から、金の硝子で出来た珠を貰った。この球は未来が分かると言うのだが。…元ネタは「蛙の王子(かえるの王さま)」。全体的にそれほど面白い話ではないが、ダークなラストだけは絶品。★★★☆☆
「狼の森」→寒い冬の日に、リーゼルは祖母のアンナに呼び出された。護衛と共に祖母の住む家に向かうが、そこは「狼の地」であった。…元ネタは「赤ずきん」。…なのだが、元ネタを上手く料理できていない。しかも、単なる人狼ものになっているのが残念だ。ストーリーもそれほど面白くない。全編を覆うゴシック小説的な雰囲気は悪くないのだが。★★★☆☆
「墨のごとく黒く」→館の側の湖で、ヴィクトールは白鳥の中を泳ぐ少女を見かけた。ヴィクトールは少女の事が気になり。…元ネタは「白鳥の湖」。「ボーイ・ミーツ・ガール」的に始まるが、後半、話が混乱し捲って、イマイチ面白くない。ファンタジーとしても面白さも皆無。★★☆☆☆
「緑の薔薇」→レヴィンは末娘のエスタルを異星人の許にやる命を受けた。エスタルは父親に従い、異星人の住む山に向かうが。…元ネタは「美女と野獣」。途中までこれと言って面白い展開でなかったので、わざわざ「美女と野獣」と元にして書く作品かな…っと思っていた。ところがラスト近くにちょっとした意外な展開があり、物語が格段に面白くなる。このSF的な設定が、なかなかのもの。結構、お勧め。★★★☆☆
今日のアニメ
・そらのおとしもの f ≪フォルテ≫ #4「死闘! 零下1.4度の温泉(カッセン)」
今日の映画
・アンドロメダ…(アメリカ/1971年)
マイケル・クライトン原作の「アンドロメダ病原体」の映画化。町を一夜にして全滅させた原因を探っていくSFだが、とにかく面白い。派手なシーンは一切ないが、原因を探っていく過程がドキドキするほど楽しい。その際に使われる化学や物理の知識量もかなりのものだ。これぞ、SFって感じだ。また映画の大半が研究所内、つまり密室で進行するため、非常に重苦しくて、緊張感がある。確かに研究所内の設備や小道具が古臭いが(特にコンピューターがアナログすぎる(笑))、そんな事が些細な事。70年代を代表するSF映画の傑作だ。