真夜中のティータイム
気になった事を気ままに書いていくブログです。 映画、アニメ、小説(SF、ミステリー、ファンタジー)、 ゲーム(主にRPG、格ゲー)の話題が中心になると思われます。
「閉じ箱(竹本健治/角川ホラー文庫)」、読了。
竹本健治を初めて知ったのは、「腐食の惑星」と言うSF小説。これがむちゃくちゃ面白くて、一気にファンになってしまった。だが、なんせ寡作家なので、なかなか読む本がなかった。そんな訳で、この本を見つけたとき、狂喜乱舞したものだ。その割に、何年も積本にしていたけど(苦笑)。
短編集。収録されているのは以下の14編。
「氷雨降る林には」→先妻の死の秘密を探る男の話。一見、ミステリーっぽく話が進むが、実は人間の心の闇を描いたホラー。陰気な雰囲気も抜群に良く、なかなか面白い作品だった。★★★★☆
「陥穽」→切り立った断崖の上で出会った男から聞いた、20年前に雪山で起こった殺人事件の話。まぎれもなくミステリー。まさにミステリー的な展開だが、それ自体はそれほど面白くない。面白いのはその後の事件の裏の真相と結末。実に良く出来ている。★★★★☆
「けむりは血の色」→持病を持つ少年と二人の友達の話。殺人事件が起こり、最後に事件の真相として、一つの仮説が語られる。その為、ミステリーのような印象があるが、実はそう言う事はどうでもよくて、あくまでも青春もの。★★★☆☆
「美樹、自らを捜したまえ」→自分の名付け親を探す女性の話。「腐食の惑星」でもそうだが、この作者、女性を主人公にしたサスペンスものを書かせたら、実に上手い(「腐食の惑星」は正確にはSFだが)。本作もサスペンスたっぷりで、実に楽しい。ただ、真相が弱いのが少々残念かな。★★★★☆
「緑の誘ない」→モデルを依頼された女性。その周りで殺人事件が起こって。まぁまぁかな。特に印象に残らない。★★★☆☆
「夜は訪れぬうちに闇」→奇妙な集会に招かれた少年たちの話。単なる二大勢力の戦いを描いた話?。この作者らしくなく、単純すぎる。★★★☆☆
「月の下の鏡のような犯罪」→浮気をした妻への復讐のために、呪術を使う男の話。一種の幻想談。作者は気に入ってないらしいが、雰囲気は良いし、作品自体も悪くない。★★★☆☆
「閉じ箱」→神父が奇妙な男と出会う話。数学的、物理的趣向満載。もう、ほとんど何かの論文だ。何というジャンルになるのかも不明。まさに異色作。こう言ういい意味で理屈臭い作品って、個人的に好きだなぁ。★★★★☆
「恐怖」→恐怖を感じない男の話。イマイチ。オチも面白くない。★★☆☆☆
「七色の犯罪のための絵本」→丸い虹を見る方法を描いた「赤い塔の上で」、家の中に何かがいる「黒の集会」、眠る少女を友達に持つ少年の話「銀の風が吹きぬけるとき」、ピアノを弾く少女の話「白の凝視」、同居人の少年の話「ラピスラズリ」、沼の側で人々が行方不明になる「緑の沼の底には」、誰もいない世界にいる少年の話「紫は冬の先ぶれ」、以上七つのエピソードからなる作品。まさに大人のための童話。ただ、出来はまぁまぁかな。★★★☆☆
「実験」→人を狂人にする実験を行い、助手の一人が実験体を監視するが。SFと言うよりは幻想ものとしてみたほうが良いかも。後、底が浅く、途中でオチが分かってしまう。★★☆☆☆
「闇に用いる力学」→板のようなものを拾ったときから、奇妙なことが起こり始める。なんか、よく分らない作品だったな。あえて言えば、「胡蝶の夢」のような作品かな?。★★★☆☆
「跫音」→15年ぶりに合った彼女は、後ろから聞こえてくる足音に脅えていた。おっ、これはなかなか面白かった。展開はありきたりだけど、結構怖いし。★★★★☆
「仮面たち、踊れ」→クラスであまり目立たない少女と会話すると、彼女には一つの悩みがあった。この手の話には大体相場が決まっていて、結局、彼女の悩みは○○だろうと考えた。実際、そういう風に話が展開していく。だが、そうなると、この読みが外れたことになる。当然のようにラストでどんでん返し。そうか、そう来たか。よく考えれば、分かる事なのに、完全に騙されたよ。★★★★☆
今日のアニメ
・魔法使いの嫁 #20「You can't make an omelet without breaking a few eggs.」
今日の映画
・怪物はささやく(アメリカ/スペイン/2016年)
孤独な少年の前に、樹木の姿をした怪物が現れる。怪物は少年に三つの物語を語るが。モンスターが出てくるが、ホラーでもファンタジーでもない、少年の心の成長を描いた人間ドラマ。喪失と再生をテーマにした作品と言っても良い。但し、相当にツラい内容だ。はっきり言って、落ち込んでいるときに観るような作品ではない。実際、これは私向きの作品ではないなぁ…っと思った。ところが最後の最後のオチで、この考えが一転した。これがあったがために、評価が上がったし、救われた。まぎれもなく傑作だ。★★★★☆